東京博物館でアフガニスタン展として特別展「黄金のアフガニスタン」が開催されていたので、訪問しました。
展示会場は、東京博物館正門左手にある表慶館でした。
建物自体が完全に博物館的であり、雰囲気は海外の博物館に近いです。
「文明の十字路」と称されるアフガニスタンの遺跡から発掘された黄金の数々が展示されるというとても貴重な機会でした。
紀元前2100年頃~紀元後3世紀頃までという遠い遠いいにしえのアフガニスタンで栄えた文化が近現代に発掘され、そして20世紀後半の混乱期を経て日本で相見えるということに感謝です。
アフガニスタンの文化遺産の復興を支援するための国際巡回展ということなので、この入場料の一部はアフガニスタンの収入にもなります。
その意味でもアフガニスタンの文化・観光資源の有効活用になると思いました。
目の眼 2016-02-01
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会場の構成は時代別に5つの章に分かれていて、眩いばかりの黄金色を際立たせるために完全な黒を背景し、効果的にライトアップされていました。
一貫して黄金のオンパレード…。
アフガニスタンは地中海世界と中国を結ぶシルクロードにおいて、ちょうど中間地点に位置していることから分かるように正に東西交易の要衝、「文明の十字路」であったのが良く分かります。
様々な文化がミックスされる地域の豊かさも感じました。
加えて交通の要衝であれば、同時に軍事的な目標にもなってしまいます。
古くはアレクサンドロス3世(大王)の東方遠征、イスラム帝国、モンゴル帝国など支配者が目まぐるしく入れ替わり、近代では大英帝国とロシア帝国とのグレート・ゲーム(The Great Game)の争奪抗争の舞台になってしまいます。
アフガニスタンは、常に中央アジアの覇権を巡る中心的な地域なのです。
やがて20世紀後半になり、この特別展の発端にもなったのが旧ソ連による「アフガニスタン侵攻」でした。
そして21世紀に入り、さらに悲劇的な「アフガニスタン戦争」へと繋がっていきます。
この「黄金のアフガニスタン」をゆっくりと見て回りながら、古代から現在に続く文化のもつ複雑さを痛切に感じざるを得ませんでした。
民族・国家がそのかたち・在り方はその地域の特性に根差したものであり、決して関連国・周辺国の国勢だけで決められることではないはずです。
しかしながら、現実はそのようには収まりません。
常に、全ての点において不均衡が連続していきます…。
この「シルクロードの秘宝」を旧ソ連から守り抜いた当時のアフガニスタン国立博物館職員の皆さんの勇気には感服します。
国を愛すること、国の宝を守ること、そして自らの職務を命懸けで全うすることを学びました。
プロフェッショナルの鑑として、強烈な印象を受けました。
会場を後にして振り返れば、会場入り口のコピーが実に印象的でした。
「自らの文化が生き残る限り、その国は生きながらえる」
まさにその通りです!記憶に残る特別展になりました。