2016/07/17、国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)は、フランス人建築家ル・コルビュジエ(Le Corbusier)氏が手掛けた「国立西洋美術館本館」を含む17の建築作品を世界文化遺産(World Heritag/ltural Site)に登録することを決定した、という報道が流れました。
上野公園界隈では世界文化遺産の登録待ちする旗がソコカシコにあるので、決まったら盛り上がりそうだなぁ、と思っていました。
ところが、07/15にトルコで発生したクーデター未遂事件の影響で登録が遅れるかも?という話で最後のところで
何が起こるか分からない状況でした。
それだけに登録決定!のニュースにはホッとしました。
「ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献―」というのが正式名称ですが、7か国17資産が対象であり、日本の「国立西洋美術館・本館」がその構成資産のうちの一つです。
手がけた多数の建築物が世界7カ国以上の国々にあるというのはとても素晴らしいことであり、ル・コルビュジエが20世紀を代表する近代建築の巨匠と呼ばれる所以であると感じます。
世界に分散している1/17ですので、「国立西洋美術館・本館」を外から見れば、恐らくはその有り難みはストレートに感じる部分は分かりにくいと思います。
その建物内部を巡れば、建物自体がアートとして興味深い造りになっています。
一見無駄のように思えるオブジェ化した階段などかなり個性的です。
他では見かけることが無いであろう創造性あふれるユニークさがあります。
非常に洗練されたデザインの建築物として、建設当時の最先端であったことは間違いありません。
さて、「国立西洋美術館」が建設された経緯は第2次世界大戦が大きく影響しています。
まさに戦前戦後の日仏関係の象徴的な美術館と言っても良いと思います。
「国立西洋美術館」に収蔵されている西洋美術のコレクションのうち、近代フランスの絵画・彫刻等が約370点もありますが、実業家・松方幸次郎氏の「松方コレクション」がベースになっています。
コレクションの収集:大正初期~昭和初期(1910年代~1920年代)から開館:1959年(昭和34年)までの流れのツカミは以下の通りです。
(日→仏)松方幸次郎、仏でコレクション収集。
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(仏→日)敗戦、仏がコレクション接収
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(日→仏)吉田茂、仏にコレクション返還要請。
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(仏→日)大部分の寄贈返還、コレクション専用美術館の建設要請。
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(日→仏)近代建築巨匠・仏のル・コルビュジエに設計依頼。
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(仏→日)コレクション返還、開館。
当初は大富豪の趣味・道楽(?)で始まったかもしれないコレクションの収集が、世界大戦を経て、日仏のキャッチボールへと繋がっていきました。
外交テーマとして取り上げられ、やがて新しい美術館が「国立」という国家レベルの大きな取り組みまで発展したことは眼を見張るものがあります。
さて「国立西洋美術館」が今年の世界遺産ブームとして観光の目玉に躍り出ました。
夏休みの時期と重なったこともあり、いきなり大行列が出来てしまったようですが、街興しの観点では大変喜ばしい限りです。
これからは、世界中からも多くのアートツーリストたちが集まってくるのは間違いないですね。