2016/09/06、フィリピン・ドゥテルテ大統領がオバマ大統領に対する侮辱的な発言を後悔している、というニュースがありました。
今さら遅い…という感じもしますが、今後の動向が読み難くなってきました。
ドゥテルテ大統領は2016年05月に大統領就任した以降、既に麻薬関連の容疑者1000人以上を殺害したと見られています。
この動きにはフィリピン国内は然ることながら、日本のみならず世界中からも恐怖の声が上がっています。
麻薬撲滅はとても重要な問題ですが、人権・人命はそれ以上に尊いです。
大義名分を掲げれば何をしても許されるような恐怖政治は、幾らなんでも酷過ぎます。
先日、ドゥテルテ大統領は国連・潘基文(パン・ギムン)事務総長との会談も断っていたので、相当ナーバスになっていたのは明白でした。
そして、オバマ大統領を侮辱するような言葉で口撃して、首脳会談まで中止してしまったのです…。
米国大統領の個人攻撃をするのは一個人のみならず国家全体、米国民全員を愚弄すること以外の何物でもありません。
公の場、それもG20という先進国首脳が集結し、世界中のメディアが一挙手一投足を取材・報道している会見場での発言でした。
行動の一貫性がとても強いドゥテルテ大統領ですが、今件は痛恨の大チョンボになりました。
あろうことか米国大統領をターゲットにしてしまったわけです。
もうそろそろ加減にしないと国家衰退のきっかけ・原因にもなりかねない重要な局面を迎えてしまいました。
今件については舞台裏では大変な事態になっていても少しも不思議ではありません。
米国閣僚たちも全員が戦慄を覚えたのではないでしょか。
特に大統領を初め、側近、国務省、国防省他の現場官僚は全員が青ざめ、落胆し、そして激怒しているに違いありません。
全ての努力と準備が台無しにされてしまったのですから…。
ドゥテルテ大統領の国際政治感覚は一体何が基軸になっているのでしょうか。
自由主義世界の一員として、急成長の途上にあるフィリピンです。
その右肩上がり経済の国家の大統領として、国民の期待を背負う気概は理解できます。
しかしながら自由経済主義の国際社会では、法治主義・民主主義・人権尊重の基本的な価値観を共有できています。
皆んな、基本が同じだからOK、国別のカスタマイズは尊重しましょう!という最重要な基本的合意があります。
同じ政治システムならではの安心感があるのです。
現在のフィリピンにはこの“連帯感”が急速に薄れつつあります。
これは明らかな事実です。
21世紀では、反米批判では過去にもリビア・カダフィ大佐、ベネズエラ・チャベス大統領が有名でした(お二方とも故人です…)。
元々反米を掲げていた国々でしたが、フィリピンはそれらと一線を画しています。
フィリピンはかつて20世紀初には米国の植民地であった期間があったので、米国の強い影響を受けています。
恐らくその多くは現在も続いているはずです。
フィリピンは中国と緊張状態にあるため、米国とは基地の復活など関係が強化されている真っ最中です。
そんな厳しい外部環境では、ドゥテルテ大統領が先ず取組みべきは“外交の軸足”をシッカリと固めることのはずですが…。
しかしながら、真逆の完全なオウンゴール、それもド真ん中、猛スピード…。
もう誰も止められないのでしょうか?
ドゥテルテ大統領は、強固な決意を示すための国内向けPR行動はもう慎むべきでしょう。
一刻早く国際社会のスタンダードを学び、過度な演出は避けるべきでしょう。
オバマ大統領に対する非礼は土下座をしても済まないレベルと思いますが、今からでも謝罪してリスタートするべきです。
そうしないとフィリピンが孤立化する可能性が急にでてきたからです。
その点、日本はフィリピンとは良好な関係を維持していると思われますので、米比間の調整役に適任です。
安倍首相の外交手腕、バランス感覚が問われる局面になってきました。
世界大乱で連鎖崩壊する中国 日米に迫る激変: EU分裂、テロ頻発、南シナ海紛争… 単行本 – 2016/8/31
宮崎正弘 (著)